私たちが目指すもの

私たちが目指すデザイン「シンプルな表現は強く、ときには美しさを纏う」

「幸せなブランディング」

やりたいこと ≒ やっていること ≒ 言っていること

うんと平たく「ブランディング」を表現するとこういうことだと思っています。

たとえば最近よく聞く「セルフ・ブランディング」という言葉。

ウィキペディアによると、

セルフブランディングとは、企業や組織に所属しない「個人」が、
自らをメディア化し、自らの力でプロモーションすること。

とあります。

ではそこに「幸せな」という形容詞を追加すると
どう感じますか?

「幸せなセルフ・ブランディング」。

自分が好きでやりたいと思っていることを
世の中や誰かに役立てるような場が与えられることで、
他のことを気にすることなく
堂々と思う存分やれること。

私はここに大谷翔平さんの姿を思い浮かべるのですが
どうでしょう?

それでは弊社にとってクライアントである企業さまにとっての
「ブランディング」にも「幸せな」という形容詞を追加してみると・・・。

私達はついついお金が回る現実に囚われてしまうと
企業というものは
何か実体のない
名前だけの無機質な存在のように捉えてしまいがちなのですが、
法的には人格を認められた生命体のようなものなんですよね。
(なので「法人」と言います。)

「やりたいこと」「やっていること」「言っていること」とは

ここで最初の

やりたいこと ≒ やっていること ≒ 言っていること

に戻ります。

やりたいこととは、理念とかVisionとか戦略とかのことです。

やっていることとは具体的なアクションのこと。
例えば「新商品発売」や
それに伴う販売活動だったり、
認知度向上のためのキャンペーンだったり。
具体的戦術とか、アクションプランとか呼ばれるものですね。

言っていることが、パンフレットだったり、LPだったり、説明資料だったり
もっというと営業のみなさんのセールストークのことだったりします。
いわゆるオペレーションの一部です。

個人ではなく法人となると
たくさんの役職のたくさんの人がそこに存在します。

その分「やりたいこと」というシンプルな一言に対して、
それは会社全体としてなのか、
それともその役職に就かれている一人の人の意見なのか、
はたまたその方の個人的な(ときには利己的な)欲求なのか、
さまざまな言葉が飛び交うようになります。

そのためにとっても
話が複雑になってしまうと思うんです。

でも、法人を一人の「生命体」として捉えられたら・・・。

案外、とってもシンプルな答えに辿り着けそうな気がしませんか?

シンプルな表現は強いです。
ときには美しさを纏います。

これこそ私たちが目指すデザインです。

目指すデザインの原点

原点。

30年ほど前。まだ代表の及部が会社員としてお勤めしていた頃の話です。
マーケティングコンサルタントファームの
クリエイティブ担当として
与えられたクライアントの広告などを担当する
デザイナーでした。

クライアントの多くはショッピングセンターや小売店。
バブルが崩壊し始め、
お金をかけて広告を作っても
まったく売上に貢献しない状況が日に日に明らかになっていった時代でした。

多くの企業で「虚礼廃止」を合言葉に
お歳暮やお中元に禁止令が出たり
「コストカット」という言葉もよく聞かれるようになり
広告費削減は当たり前、人員削減も次々に行われ、
不安が世の中に拡がっていきました。

偶然か必然か、
アップル社のMacintosh出現により
印刷業界ではDTP(Desk Top Publishing)の波が押し寄せ
「プロのデザイナーはこの世から消える」と
もっともらしく言われるようになりました。
(こうして生き延びていますけどもw)

私自身、毎日リスキリングによる転職を考えていました。
でも明確な答えにたどり着けない。
なんだか今の時代と似ていますね。

そんな中
年2回のレギュラーでやらせていただいていた
老舗洋菓子メーカーのお歳暮パンフレットに着手することになりました。

当時、私のお勤めしていた会社は
部署を横断する形のプロジェクト制を採用していて
マーケティングプランナーとコピーライターと共に
私がアートディレクションとデザインを担当する3人のチームで担当していました。

チームでキックオフをしたのですが
誰からともなく
「今回が最後かもね」という話が出ました。

最後となるかもしれないから、今までのご恩返しになるように。
おそらく3人共
そんな気分でミーティングを終了したのを記憶しています。

クライアントは老舗の洋菓子メーカー。
盆暮れの付け届け用に、クッキーなどの乾き物がメイン商品。

私がお勤めしていた会社が、その名に「ライフ・デザイン」を冠していたこともあり
それまでのパンフレットでは前任者の頃から
「いただいたお菓子で素敵なお茶の時間を」をテーマに
作られていることが多く
代々それを踏襲してきました。

私もその方向で考えながら
最後としてふさわしいものがどんなものか
中々イメージが定まらないまま
実際の店舗を覗きに行ったときに衝撃を受けたのです。

店員の方の目が死んだ魚のようだったことに!

かつて日本一売れると言われた
にぎやかだったそのショッピングモールに
お客の人影はなく
そこに立つ店員の方たちはみんな目の光を失っている!

これでは何を売っても売れるわけがない!
「素敵なお茶の時間」なんて
説得力も何もあったもんじゃない!
今彼女たちに必要なのはパンフレットじゃない!
私にできることなんか何もない!

うすうす知っていると思いこんでいた現実の深刻さに
打ちのめされた瞬間でした。

その数日後。

その時の私を今の私が見かけたら
「目が死んでるよ!」と声を掛けるのではないかと思います。

お弁当を買いに近くの神泉交差点(渋谷)を渡っていたときのことです。

「5センチの宇宙」という声が空から降ってきました。

などと書くと何かオカルトめいて怪しいですが
本当に感覚的に
頭の中で閃いたというより
空から降ってきた感じだったのです。

これがテーマだ!

すぐさま会社に戻り
ものの10分で20ページの台割を書き上げました。

食べてしまえばすぐに無くなってしまうお菓子だけど、
土の恵みと
水の働きと
火の力と
風の作用、
かつて宇宙の4大元素と呼ばれるものと同じものでできている。
地球や自然との違いは
そこに人の指先が加わっていることだけだ。

それを極力
シンプルにお菓子そのものを見せる写真で表現する。

そんな台割でした。

勢いづいて書き上げたものの
そこにはいくつかの課題がありました。

ひとつめは今までとあまりに違いすぎること。
関わっている人たちの
現状維持バイアスによって反対されるのではないか?

ふたつめは私が想定している
カメラマンやスタイリストのギャラが高すぎて
実施不可能と判断されること。

ところが、社内でも簡単に了承がとれ
カメラマンやスタイリストの方たちも
ギャラ交渉に応じていただき(それでもまだ高かったですが)
クライアントも予算を増額していただくなど
(ただし4ページ削減で印刷費を下げるなどの工夫あり)
トントン拍子で刷り上がってしまったのでした。

後日、現実に打ちのめされたお店を
おそるおそる覗きに行ったら
そこには目に光を取り戻したスタッフがいらっしゃいました。

ショーケースの中には
ページが開かれた状態で
商品とともにパンフレットが置かれていました。

出張で立ち寄った金沢店でも柏店でも
同じことが起きていました。
柏店ではさらに筒状に巻かれたパンフレットにリボンが巻かれ
お客さまが持ち帰りやすいようにディスプレイされていました。
思わずなんとも言えない感情と
涙が湧いてきました。

デザインにもまだできることがあった、と
私自身が思えたのかもしれません。
「大丈夫。まだ、ここにいていいよ」と。

プロジェクトチームの私以外の二人が立ち寄った
甲府店や静岡店でも同じことが起きていました。

もっと驚いたことは
クライアントの本部の方のお話によると
「本部からの指示はいっさい出していない」とのことでした。

つまり全国津々浦々の店舗で
自発的にその動きが起きてしまったとのことでした。

まるで奇跡です。

その老舗洋菓子メーカーとは
当時創業70年を迎えていた
洋菓子界唯一の皇室御用達、株式会社コロンバンさんです。

埼玉にある本社工場には
すでに亡くなっていた創業者、
門倉国輝翁の最後の直弟子という方がいらして
その方からの伝言として
「オレたちの菓子をこんなふうにパンフレットにしてくれて
 本当にありがとう」という言葉もいただきました。

当時はこの「オレたち」とは
社員全体の総意という意味に捉えていたのですが・・・。

今振り返ってみると
「オレたち」とは
「オレと親父(門倉国輝翁)」という意味だったのではないか。

もっと言うと
神泉の交差点で空から降ってきた声は
「創業者、門倉国輝翁の思い」だったかもしれません。

創業者はこんな思いでこの法人を世に生み出した。
それこそが
生命体としてのその法人の存在理由なのではないでしょうか?

企業としての「やりたいこと」の原点も
ここにあるのではないでしょうか?

そこにアクセスできたからこそ
創業者を知らないはずの若いスタッフたちにも
届いた何かがあったかもしれない。

届くものがあったからこそ
「今自分にできることを自分で考え行動に移す」という
今でいうところの「モチベーション」を引き出せたのかもしれない。

コロンバンパンフレットデザイン制作

このときの体験が
今も私の原点となっています。

私たちが目指すデザイン「シンプルな表現は強く、ときには美しさを纏う」

やりたいこと ≒ やっていること ≒ 言っていること

「やりたいこと」はここまで長々書いてきた経験をもとに
創業者の思いへのアクセスからスタートすることが多いです。

当時はオカルトめいた体験でしたが
インターネットが存在する現在では
そのプロセスはもっと容易になっています。

スタートアップ企業でしたら
目の前の方に聞けばよいですし、
そうでなければ動画や記事を検索し、
ある程度理解できたあとに社員の方たちとお話をする中で
聞き出すことも可能です。

そんなふうにして
「やりたいこと」を明確にしていくことを
大切にしてます。

「やっていること」は
多くは業務内容に関わる部分ですので
クライアントの皆さまの範疇です。

「言っていること」は
整理した「やりたいこと」と
今現在の「やっていること」、
他の場面でクライアントの皆さまが伝えていることなどを踏まえ
媒体特性なども考慮しながら
組み立てていきます。

最後に引き算です。

ここを削ったら意味がなくなる、というところのみを残し
残りはバサバサっと削ります。

この点がWEBと紙媒体との大きな違いです。

色使いやバランスの取り方で
センスを語る方が多いかもしれませんが、
やっている当の本人としては
「何を残し、何を削るか」という点で
もっともセンスが問われているような気がします。

シンプルに仕上がるか、
ただただ中身が薄いものに仕上がるか。

最初の方に書いたことの繰り返しになりますが、

シンプルな表現は強いです。
ときには美しさを纏います。

これこそ私たちが目指すデザインです。

中々奥が深いです。
いまだにゴールが見えませんw。

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