「聞く力」と「デザイン思考」

こんにちは、及部です。

ここ何回か「聞く力」について書いてきました。
デザイン事務所がなぜ?とお感じになった方いらっしゃるのではないでしょうか?

デザインとはコミュニケーションの手法のひとつです。

言いたいことを発信するために
まず形にすることが多いように錯覚しますが、
経済活動の中においては
エンドユーザーがこうして欲しいという要望への回答として
形にし、発信することが多いです。
つまり発信の前に
顧客の要望を聴き取る力がないことには話になりません。
だから、デザインする上において
造形的センスも大事なんだろうと思いますが、
もっとも重要なのは「聞く力」です。

聞くというのは
なにもロジカルな質問力を意味するだけではなく、
観察力
AさんとBさんの言っていることは一見真逆だけれど
そこに通底している何かがありそう、と気づく力
仮説を立てて考える力も含みます。

そして、それを目に見える形にしていく多くのデザイナーは
自分たちが考えているよりもずっと
「聞く力」を自然に鍛えているかも知れません。

結構、こう見えて大変なんです。
お仕事と向き合いながら
ゴールのないトレーニングをし続けてます。
誰か、褒めてw。

そういうわけで、聞く力について考える機会が多かったとも言えます。

話は変わりますが。

「デザイン思考」とか
「デザイン経営」とか
そんな言葉を耳にされたことはありますか?
今、流行っているみたいです。
経済産業省も推進されていますね。

日経デザインという雑誌を購読しているのですが
その2020年3月号の特集が
「デザインシンカーを育成せよ」。

Design thinker ですね。
デザイン思考の人という意味です。

1冊まるっと読んでみると
デザインという言葉から一般的にイメージされることと
このデザイン思考とかデザイン経営とかで表したいデザインの意味が
どうやら食い違っているので、伝わりづらくなっている…
ということのようです。

あらららら。

でも、それって多分。

「デザイン思考」とか「デザイン経営」とか言われると
自分もパソコンに向き合って
慣れないAdobeのアプリケーションをおぼえて
デザインしなくちゃと考える人が多いからじゃないんでしょうか?

デザインしなくていいんですよ~。

ただ、デザイナーが常日頃やっているようなプロセスで
物事を考えてみたらどう?

という話なんだと思うんです。

メモ書きでも構わないので
考えたことを目に見える形にして
具体的に話し合っていこうね。
あいまいな部分や、空気を読むとか言うのは
下手な伝言ゲームになるからやめようね。
話し合っていくうちに何かがぱっと閃いたり、
誰も考えてなかったようなことがふっと降ってくる瞬間に出会えたら幸せだね。
それって、イノベーションってやつじゃない?

そんなふうに平たく考えて
小さいことから試していって
とにかくとにかく続けていけば
いつかビッグヒットを掴めるかもしれない。

なんたって「デザイン思考」には実践的な経験が必要だって書いてありました。

話を日経デザインに戻します。

記事の中で多摩美術大学教授の永井一史先生は

「デザインは構想を形にすること」

日経デザイン 2020年3月号より

とおっしゃってます。
色や形を決定するだけではなく、発想のプロセスがデザインなんだと。

最初に構想がある、というところがポイントなんですね。
この構想は、目的とか理念とかにも置き換えられるかと思います。
それを具体的なプランとか、形にするとこうですよ、というプロセスを
デザインとおっしゃっているんだと読み取りました。

これ、確かに逆転しやすいかもしれません。

たとえばA4のフライヤーを作って、というと
あまり経験のない人は
最終的な見た目から考えることが多いみたいです。
目的とか、ターゲットとかは
どこかに放置されやすい。

でもって、その採用を決定する時には
「こんなにこの子が頑張ったんだから」という理由で採用されるなんてことも
きっとたくさんあります。

それはそれで、アリだと思うんです。
だって、そのことがきっかけで
「この子」はモチベーションが上がって
仕事のおもしろさに気づいて
何十年か後、経営者にまで上り詰めるかもしれない。

ただし、このパターンはデザインではあっても
「デザイン思考」や「デザイン経営」ではないんだと思います。

別な記事の中で、

米スタンフォード大学のビル・バーネット先生は

デザイン思考のプロセスは
「共感し、問題を再定義し、アイデアを出し、プロトタイプを作る」

と定義されています。

こちらは課題解決に重点が置かれています。
とてもわかりやすかったです。

やはりアメリカ発祥の考え方は
アメリカ人の解説が一番わかりやすいな~と思いました。

でもって、バーネット先生がおっしゃるところの最初のプロセス、
「共感」というところで
やはり「聞く力」はとても重要なんです。

その「聞く力」と実際に「形にする(デザインする)」との間に
「課題を見つける力」と「アイデアを提案する力」が挟まってますね。

この間に挟まっている2つを
より多くの社内の人材にも身につけてもらおうというのが
どうやら「デザインシンカーを育成せよ」ということのようです。

「聞く力」は学生時代に身につけるもの。
「形にする(デザインする)」はプロと二人三脚で、と。

ぜひ私も、そのプロの一人でありたいものです。

ここから先は余談です。

日経デザインにはこうも書かれていました。

デザイン思考の手法を座学で学んだり、
ワークショップに参加したりするだけでは
デザインシンカーにはなれない。
多くの企業がデザイン思考の活用で失敗するのは、
企業のマネジメントとして組み込んでいないためだ。

日経デザイン 2020年3月号より

う~ん、なるほど。
うまくいかないことが多いんですね。

それって多分・・・。

企業からワークショップに
「君、これに参加して」と言われる人って
おそらく次世代のリーダー候補だと思うんですよね。

ということは優秀なわけです。

学生時代にすでに「聞く力」のベースはしっかりできあがっていて、
だから上司の言うことがわかるし、
顧客への観察力も経験で磨かれていく。

そんな人たちが集まってワークショップが行われると
それはそれは盛り上がって感動体験できて終了!

で、会社に戻って自分がリーダーとなってプロジェクトを立ち上げます。

はたしてそのプロジェクトのメンバーたちは
リーダーと同じように優秀な「聞く力」があるのでしょうか?

そういうわけにはいかないと思うんですよね。
数多くいる社員の中で
「聞く力」が学生時代に十分身につけられた人ばかりではないからこそ、
その人は優秀だと認識されて
リーダー候補として異業種が集まるワークショップに参加できたんでしょうから。

ここには、
わかる人には、
わからない人が何故わからないかが
わからない
という人類永遠の課題(?)が存在します。

「デザイン思考」において
リーダーシップ教育の話はとてもよく目にします。
それと同じくらい
そのリーダーとともに働く人たちの
「デザイン思考」における
メンバーシップ教育というのも重要かと私は思うのですが
それってあまり目にしません。

表裏一体には
なかなかなっていないように思うんです。

そのあたりにうまくいかない原因がありそうだな~と
私は思ってたりします。

まだまだ「デザイン思考」「デザイン経営」は黎明期で、
時間が解決してくれるということかもしれませんね。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

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